皆さん、森の活動に参加されどのくらいの時間が経ちましたか。来られた時と現在の森の姿との間にどんな違いを感じていますか。四季の変化には気づかれるでしょうが、 森全体の姿が毎年少しずつ変化していることなかなか気付けませんね。
林に入り込んだアオキやシュロ、ヒサカキ、シラカシなど整理してもすぐに大きくなり目線を超え、見通しが悪くなり森全体が暗くなり、弱った木の根元からは知らない間にひこばえが出、樹木は太くなり背をのばし、 気の付かない間に森の中の樹木は変化しています。
１．植物の移り変わり（遷移）
季節ごとに植物の姿が変わっていくことには目に付きやすいですが、数十年数百年という年月をかけ光が沢山必要とする植物（陽樹）から光が少なくても我慢しながら生育できる植物（陰樹）へと森の中の樹種は変化しています。
溶岩の上など光一杯でも土のない状態の場所には地衣類や苔が生え、長い年月を経て出来上がった土の上に光の好きな植物が生え、次に光が少なくても我慢できる植物が侵入し、これ以上植物種の変化がなくなった状態（極相林）になります。 とにかく時間をかけ本来その場所に合った植物群落へと姿を変えていき、最後に到達した植物群落を極相林といいます。
伐採跡地、山火事跡地などのような場所は常に光が当たっていて、出来上がった土があり、その土の中には木の根、種子などがあり成長を始めます。そして光の好きな植物が繁茂し、次に光がなくても我慢できる植物が入り込み知らず知らずのうちにシラカシなどの林になります。
２．新治の森
戦前まではアカマツやコナラ、クヌギなどの雑木林とカイコの餌としての桑畑で地域住民の生活を守っていました。ところが、戦争中にほとんどの樹木が切られてしまい禿山となってしまったようです。戦後、食料不足のために谷戸は田んぼ、 条件の良いところは畑、残った場所はスギやヒノキの植林地にしたり雑木林として利用し始めました。時がたち生活が落ち着き、食料も潤沢になってきたので、野菜畑は縮小し植林地や雑木林に、田んぼは徐々に放置され畑に変わったり葦原に変わり今の姿になりました。 今でもあちこちに大きな桑の木が見られます。
戦後の復興期に大量の木材が消費され、それを補うためにあちこちにスギ、ヒノキ、サワラなど常緑針葉樹の植林地ができましたが、ほとんどの植林木は利用されないまま現在に至っています。植林した当時、手を入れて下刈り枝打ち間伐が行われたところは、 林床にまで光が入り下草が生え落葉広葉樹の生長も見られますが、全く手入れされずの林は、下草も生えず土壌が剥き出しになっているだけでなく大切な森林土壌が流れだし根が剥き出しとなっています。
雑木林も燃料革命で薪の利用がなくなり、伐採利用されることなく樹木は年を取るだけで、今まで経験したことのないほどの樹齢になっています。
３．人類が誕生した時の森
人類が誕生したのは約１００万年前です。植物は数億年前に海から上陸し、人類が誕生した時の森の姿はシラカシなど陰樹主体の極相林になっていました。誕生した人類は衣食住をはじめとし生活に必要な物資全てを森林に依存してきました。 人口が少なかった時は森林をどのように利用してもなんの問題も起こらなかったのですが、人口が増えるにしたがい食料不足となると森林を切り開き畑にするだけでなく、住宅地や工場にも利用してきました。森林が人間の生活環境を守る環境資源として大切なものであることに気づくのが遅く、 今は温暖化が進み気象が大きく変わりはじめ、北極や南極の氷が溶けだし海面が上昇し０m地帯が水没し、洪水がおこり、山火事が起こり、旱魃が起こり大変なことになっています。